2019年10月12日 台風19号の影響が各地で増大。大きな被害となった。
自宅は割と高台にあり、家屋への被害はなかったが、ある場所に置いた無線設備一式が水没した。
水没した電子機器は、世の中では保証対象外となり、捨てられてしまう。沢山の家電がゴミ化し街中に散乱していた。その流れに乗れば、この無線設備一式はポイ。となるのだが、ここで変な修理魂に火がともった。
なおそう。決して成りたくてなったわけじゃない。電子部品が悪い事をしたわけじゃない。泣いてるよ。聞こえるよ。最後の最後まで言いたかった言葉を、聞いてあげようよ。
洗おう
普通はやらないだろう。でも普通じゃない事が起きたから、普通じゃない事をして対処しなければならない。
心を鬼にして、高圧洗浄機で丁寧に洗った。安定化電源や無線機、ルータ等が満載のラックに、まさか水をぶっかける事になるとは・・・。
やらないで後悔するなら、できるだけやって何か得た方が良い。
しかも大事なのは、水没してから時間が経過していない事。
自分的にはリミットは2日。それ以上経過すると腐食が酷くなってきて、修理が難しくなってくる。とにかく善は急げ。
ロッカーも水没。もちろん上履きも。臭くなっちゃった。がーーん。こいつもついでに洗浄しよう。
無線機 FT-8800 は一体
無線機を開けてみた。あちゃーー。泥だらけだ。
これも洗うしかない。洗面台に水をため、ここに基板丸ごとざっぶーん。そして歯ブラシできれいに洗おう。コネクタ部分も念入りに洗う。
生まれて初めてだ。水の中に基板をどっぷり入れるの。
よし。これできれいになった。ディスプレイ部分も全てバラして歯ブラシであらう。うわぁ液晶の中に水が入っちゃったー。金枠をはずすと水が出てきた。ほーー。導電性ゴムみたいなので、液晶につながってるのね。乾かしてちゃんと閉めたら、動くんだろうか。不安がよぎる。
そして清掃後は、以下のようになった。案外きれいに洗えるんだよー。
無線機を組み上げる
キレイになった所で、1日以上乾燥させる。ドライヤーも使った。
外したネジをひとつひとつくみ上げる。熱伝導グリスも忘れずに。
おそるおそる電源をいれたら、なんと! 電源が入った。
最初はちょっと挙動がおかしい。メインバンドの音声が出てこない。無線機の設定を工場出荷状態にしたが、現象は変わらず。スピーカ音声を切り替えている回路がおかしいのかとおもったが、夜更けてしまい断念。しかし次の日に電源を入れてみたら、その現象がすっかりなくなってしまった。どこかに水分が残っていたのかな。
メンテナンスモードに移行し、周波数のチェック、出力レベル調整、CTCSS Deviation調整、DCS Deviation調整。ひととおり実施した。特に問題はなさそうだ。
無線機君。おかえり! 寒かっただろう? ごめんなー。
君にはもっともっと、活躍してもらおうと思うよ。
今度はもっと、高いところに置くねー。
これからもヨロシクねー。
壊れていなかった理由は・・・後で考察します。
業務用ルータ NVR500 は・・・
だよねー。こうなっちゃうんだよねー。
無線機と同じように、洗面台に水をため、ここに基板丸ごとざっぶーん。まずは歯ブラシで洗ったぞよ。心を込めて。丁寧にねー。
そうそう。電池は駄目だね。この電池は現在時刻を覚えておくために使われている。
がんばれー がんばるんだーー。 生き返れ――!
そして。電源を入れてみた。あれ。ちっとも入らない。
ACアダプタからDC電圧がちっとも来ていなかった。
安定化電源から12Vを供給してみたら、電源が入った。
ヤフオクで 12V2A 純正アダプタを 1999円でゲットした。
https://page.auctions.yahoo.co.jp/jp/auction/s681836844
電源を入れると、ピ――― ピピピピッとなるはずなのが、ならない。
スピーカーかなぁと思ったので、圧電ブザー付近を探っていた。
テスターを抵抗計にして圧電ブザーの端子を触ると、ジリジリと音がする。圧電ブザー自体は生きていて、ブザー駆動回路が死んだようだ。オシロでブザーIC付近の波形をみてみると、それっぽい波形が見えているのに、圧電ブザーに電圧はかからない。どうもパタンが切れちゃったようだ。
もっと追う事は出来るけれども、以下の理由によりこのままインオペとした。
・ブザーがなくても特に支障をきたさない。
・むしろブザーを止めたい場所に設置していたので好都合。
・回路図が無い。
・エラーが発生したら、LEDランプがオレンジ色に点灯するのでわかるし、ログも残る。
・ルータの時刻はセッション確立後に NTPサーバーを使って時刻合わせを行うので、特に支障はない。
ルータ故障個所は、以下の通りだった。
・ACアダプタ
・圧電ブザー駆動回路(パタン切れ)
・バックアップ電池
USB端子にUSBモデムを接続し、インターネット回線を確保している。動作ログを見た所、特に問題なく稼働している様子。
ルータ君へ。
君と出会ってから、10年以上になるけれども、一度も壊れた事はなかったね。
沢山の場所に連れて行って活躍してもらったね。
こんなところでサヨナラしたくないから、頑張ったよ。よく生き延びたね。水の中は冷たかっただろう? しかも泥水だったもんね。
ちょっと音がでなくなっちゃったけど、君にはまだ出来る事があるから、がんばってもらうよ。これからもヨロシクねー!
故障個所は後で考察します。
安定化電源は、どうなった?
そう。君だけ泥だらけにならないはずはないね。無線機と同じようにすべての基板を分解し掃除して乾燥させて電源を入れたら、問題なく動作したよ。
電源君へ。
君もみんなと一緒に逃げることが出来ず、頑張っていたんだね。
涙が出てくるよ。本当にありがとう。無事で嬉しいよ。
壊れていなかった理由は、後ほど考察します。
HRI-200はどうなった?
これは、パソコンからUSB電源供給されて稼働していたものだった。
まずは分解、掃除したら、以下の様にキレイになった。
君もみんなと同じように、電源が入るものだと思っていたが、・・・
電源が入らない。ICの型番刻印から仕様書をネットでググって取得。
テスターとオシロスコープを駆使して端子を当たって行くと、どうもUSBに供給した電圧がICまで届いていない。パタンが切れちゃったようだ。しかも外見上はつながっているようにみえるのに、スルーホールが切れちゃったようだ。
スルーホールとは、基板に小さな穴が開いているのが画像からわかると思う。表面と裏面のパタンを接続する穴の事で、この穴の中が切れてしまったのである。穴は無数にある。
ちなみにカメラはこちら。3950円でゲットしたもの。便利だよー。
Skybasic Wifi デジタル 顕微鏡 2MP 50-1000倍 電子顕微鏡 拡大鏡 内視鏡 8 LED IOS Android Windows対応 肌チェック/生物観察/細かい部品チェック実験に 【日本語説明書/1年間保証付き】 SKYBASIC https://www.amazon.co.jp/dp/B07FD7DTKX/ref=cm_sw_r_li_dp_U_JoU3DbM165FZZ
アマゾンでゲットした拡大鏡を使用し、パソコン画面にめい一杯大きく表示させて、一つ一つパタンを修復していったら、こんな感じになった。Powerランプは点灯するようになったが、だめだ。どうも電源ラインのスルーホールがことごとく断線してしまったようだ。
まだUSB機器として認識出来ていない。クロックも止まってるなぁ。
拡大して見えるけれども、テスターの先が太くて、端子に当たるのも一苦労。はんだ付けなんてもっと大変。
今日も1本。明日も1本。次々に手術を施した。
いつかきっと動き出す事を夢見て。何日もかかった。
回路図が欲しい。。。でも、無い。
しかし、HRI-200君は、断線箇所が多すぎて、収拾がつかず。
『私失敗しないので。』と言いたかった。
涙を流しながら、インオペとした。
HRI-200君へ。
君はみんなの中で一番苦しかったね。熱かったね。寒かったね。辛かったね。助けてほしかったよね。
助けに来ることが出来なくて、本当にごめん。君はとっても良く働いてくれたね。今まで本当にありがとう。ありがとう。
君を治せなかった。悔やむ。
どうしてこんなに酷かったのか。後ほど考察します。
兵庫県に住む仲間の協力を頂いて、別なHRI-200に置き換え、ノードシステムの修復作業を進める事にした。ありがとおおおおおおおお! 素晴らしい仲間に出会えて感謝!!
パソコンはね。。。
実はレンタル品だったので開封する事が出来ず。そのまま返却いたしました。先日納品された新品だったのに。 しくしく。
そしてラック組みしました。
キレイに洗って息を吹き返した君や、ちょっと障害を負ってしまった君だけど、もう一度、一致団結してもらった。
以前のラック組みは、地震の事を考えて配置して固定していたが、まさか水の事は考えていなかった。
ラック組みしながら、考えた。どうして派手に壊れた箇所もあれば、全然壊れなかった所も結構あった。なぜだ・・・
故障個所から浸水メカニズムを探る
この台風浸水被害から、自分たちは何を学ぶべきなのか。被害を最小限にするためには、どうしたらよかったのか。それを知り、次に生かしたい。そんな想いでここまで歩んできた。
どんな風に水がはいったのだろう。
まず水は下から浸水すると想定し、浸水順序を書いてみた。
浸水順序と浸水場所 | 考察 |
①ルータNVR500用 ACアダプタ | 自分は必ずテーブルタップを付ける癖があり、たまたまこんな形になっていた。一番最初に浸水したのが、このACアダプタ。たしかにこのACアダプタは完全に壊れた。 |
②安定化電源 KRV300のAC電源 | テーブルタップとコンセントに漏水し、安定化電源への電源供給が止まった。 |
③ルータNVR500本体 | ルータは既にACアダプタからの電源供給は途絶えていたので、非通電状態で浸水したと思われる。 ブザー回路は若干壊れたが、ほぼ壊れていなかった。通信エラーになると、ブブブブーッと音が鳴るので、浸水中にブザー回路に電流が流しちゃったので故障したのかもしれない。 |
④安定化電源 KRV300本体 | 非通電状態で浸水したと思われる。 安定化電源は壊れていなかった。 |
⑤USBモデム NVR500 からUSB給電 | NVR500は既に電源供給が止まっている。従って、USBモデムは、非通電状態で浸水したと思われる。 USBモデムは壊れていなかった。 |
⑥ノートパソコンのAC電源 | テーブルタップは既に浸水し電源供給は止まった状態でノートPC電源供給が止まっていたと思われる。 |
⑦HRI-200 パソコンからUSB給電 | じつはここがくせ者。 このUSBはパソコンに接続されており、パソコンはバッテリーで駆動していた。そう。。。通電状態でHRI-200が浸水したのである。 HRI-200は修復不可能になる程、大きなダメージを受けた。 |
⑧無線機本体 | 安定化電源が既に浸水しており、電源供給が止まっている。 非通電状態で浸水したと思われる。 無線機は故障していなかった。 |
⑨パソコン本体 | レンタルPCなので、開封できず。故障状況確認が行えなかったが、バッテリー駆動状態で浸水した事からすると、派手に壊れたのだと推測される。 |
ここで関連性があるのに気付いた。
故障した箇所は、通電状態の時に浸水したか。
もしかしたら
・ノートパソコンのバッテリーを抜いておいたら、HRI-200はここまで酷い事にならなかったのかもしれないねー。
・たまたまテーブルタップの取り付け位置が下の方にあったので、早めに電源供給がストップしたので、この程度で済んだ。もしテーブルタップ自体をラックの上に置いていたら、もっと故障したかもしれない。
どうしたらよかったのか。今後どうすれば良いか。
仲間達とこの件について、夢のような議論をした。
・ラック自体を風船の中にいれていたら濡れないんじゃないのかな
・それではどこかに行ってしまうので、柱にローラー付けして、水が来たらラックまるごと上昇したら濡れないんじゃないのかな。(ダムや堤防などに似たような仕組みがあるよね。)
・ラックの底面に水を検知するセンサーを取り付け、そのセンサーが反応したらラックのシステム電源をシャットダウンしたら。(水の高さを検知)
・地震対策だとなるべく下に置きたいが、水害対策だと上に置きたい。考え方は相反する所があるんだね。
自分は海から遠いところに住んでいる。だから津波は来ないと信じていた。でも、今回解った。内陸でも津波は来るんだ。海の津波とはまったく違うのだろうけれども、やはり備えておく事は重要だったんだ。
テーブルタップは、本当に何気なく下の方にくくりつけていたのが、大正解だった。
しかし驚いたなぁ。ヤエスFT-8800 は、水没しても治るんだなぁ。ちょっと自信がつきました。